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演劇企画集団LondonPANDA主宰 大河原準介 インタビュー 4/4

演劇企画集団London PANDAは2007年に東京で旗揚げし、今年から仙台に拠点を移しました。再出発公演『おふとんのなか』を12月に控えながら、月に1回東京からプロの講師を招いて行うワークショップ『舞台の入口』を10月からスタートさせています。現在どんな思いで活動しているのか/今後どのように展開していくのか、LondonPANDAの舞台の雰囲気や、今作『おふとんのなか』のみどころを、主宰の大河原さんにお話しいただきました。その様子を4回に渡ってお届けします。

【4】今回作品のみどころ

3,000円で100分間っていうお金の使い方として、こんなに楽しい使い方もあるんだっていうのは感じていただける作品には絶対にしようと思っているので。

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― では、12月の公演「おふとんのなか」のみどころはどんなところでしょうか。

みどころ…というかすごく大事にしたいと思っているのは、ネットコミュニケーションとリアルコミュニケーションの大きな違いであったりとか、ネットの良いところと悪いところは両方出したいと思っています。一番わかりやすく言うと、スカイプのビデオ通話って目が合わないんですよ。なぜならカメラを片方は見てしまうから。それがすごくネットコミュニケーションを象徴してるなと思っていて。目を見て話すことはできない、けどそれ以外の情報はすべて伝えられる、けど最後のそのほんの少しのずれっていうのが、いわゆるリアルコミュニケーションとネットコミュニケーションのずれにそのまんま似てるなと僕は思っていて。なんか、そこらへんは面白く描きたいなって思ってます。

― なるほど。「おふとんのなか」は作品としては再演ですが、今回再仙台での最初の公演に選んだというのはどんな意図があるのでしょうか?

さっきちょっと話した29歳の時の佐藤佐吉賞で、最優秀演出賞と優秀作品賞を頂いて。で、それまで僕の友人は芝居を付き合いで観に来てくれてはいたんですけど、その時に、見たことないような目で褒めてくれたんですよね。それで、自分の中で、「ああ」っていう気付きがあったというか、なんか自分の意識が変わった作品で。仙台の人に何を最初に届けようかなーって、なったときにやっぱり何も迷うことなく『おふとんのなか』だなって。

― お客さんの手ごたえがあった作品なのですね。

そうですね、お客さんの手ごたえがあったし、作品を作るすべての要素で、こだわれるな、もう一回ブラッシュアップするんだったらこれやりたいなっていうところですかね。

― では最後に、この仙台での最初の公演、なるべく多くの人に観てもらいたいっていうのはそうだと思うのですが、特にこういう人たちに観てほしいというのはありますか?

まずは、演劇観たことない人に観てほしいですね。なんか、普通の、多分イメージしている演劇とは、全然違うものなので。

― 普通の人がイメージしている演劇というと?

いわゆる、いわゆる新劇的だったり、商業演劇の大きなお芝居だったりとは全然違う作り方で。でも、3,000円で100分間っていうお金の使い方として、こんなに楽しい使い方もあるんだっていうのは感じていただける作品には絶対にしようと思っているので。新しいお金の使い方として仙台に演劇というのがあるんだって思って頂けるように。全然、演劇観たことない人にこそ観てほしいですね。あと、初演の時に優秀主演男優賞を受賞した用松亮くんを東京から招聘してるので、彼の演技にも注目してほしいです。

聞き手・文 塚本恵理子

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演劇企画集団LondonPANDA主宰 大河原準介 インタビュー 3/4

演劇企画集団London PANDAは2007年に東京で旗揚げし、今年から仙台に拠点を移しました。再出発公演『おふとんのなか』を12月に控えながら、月に1回東京からプロの講師を招いて行うワークショップ『舞台の入口』を10月からスタートさせています。現在どんな思いで活動しているのか/今後どのように展開していくのか、LondonPANDAの舞台の雰囲気や、今作『おふとんのなか』のみどころを、主宰の大河原さんにお話しいただきました。その様子を4回に渡ってお届けします。

【3】LondonPANDAの作風

なんでレッテル貼るの?っていう。じゃあ演劇でそれを本物で作ったらみんなはどう見るんだろうな、っていうのにたぶん興味がある。

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― LondonPANDAではどんな雰囲気の演劇を作っているのかお聞きしたいのですが、ホームページに合言葉は”ポップ・ブラック・シュールレアリズム”ってありますよね。ブラックユーモアみたいな感じなのでしょうか?

ブラックって、ブラックユーモアに限らず、単純にあんまり、大手を振って大声でしゃべるような事じゃないようなことが自分はすごく惹かれるんですよね。例えば、ネトゲ廃人が今回テーマですけども、ほかの作品ではマイルドヤンキーだったりとか、風俗嬢であったりとか、あとは近親相姦であったりとかっていう…単語としては知っているけども実際には見たことないし…みたいなものに、すごく興味があるというか。
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― なるほど。

語弊を恐れずに言えば、社会的にレッテルを貼られやすい人たち、そして彼らを見る視点というものにすごく興味を持っていて…例えばヤクザが「本気で愛している」って言ったときに、それを疑うとか、ホームレスが政治なり社会なりを糾弾しているときにそれを、穿って見るとか、あると思うんですよ。それは何でなんですか?っていう…その、どこかレッテルを貼っている視点に対して、ちょっと懐疑的というか。ちょっと一回、主体的に物事を見てみませんか、っていうのが自分の中でずっとあって。風俗嬢のSEXってどう思います?って言ったら、どうせ全部演技なんでしょ?とか、パッと思いつくレッテルがあると思うけど、なんでレッテル貼るの?っていう。じゃあ演劇でそれを本物で作ったらみんなはどう見るんだろうな、っていうのにたぶん興味がある。

― 本物で作るっていうのは?

本物で作る、っていうのは、えーと…「ヤクザが本当に愛している」っていうシーンを作った時ですね。「風俗嬢が本当に感じている」でも良いですけど。そういう、何か皆が「そうじゃないだろどうせ」っていうものを、リアルにした時。でもそこはリアルじゃないんですよ。
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― 演劇だから(笑)

演劇だから。大きな嘘だから。でも何かちょっと、そのレッテル薄く剥がせるんじゃない?って思っていて。

― 演劇だからですよね。

うん…きっと。だから、そのブラックっていうのは、ブラックユーモアっていうよりかは、社会の闇みたいなイメージ。
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― その、社会の闇みたいなものを…結構ストレートに舞台に乗せるような感じですか?

ストレートに乗せるとなると、主題を延々と追及していったら、僕が見てて辛い。

― 辛いですよね。

だから、ポップを付けます。見てて楽しめないとまずいけないと思って。ポップでブラックで、なおかつ笑いを作る時はあの…いわゆる「シュールな笑い」っていうもの。ダジャレとかじゃない笑い、というか…面白さがファニーじゃなくてインタレスティングというか。計算がちゃんとされていて、理解は筋が通っている、みたいなものが好きなので。

― 何となく、分かりそうで…観てみるしかないですね(笑)

そうでしょうね(笑) たぶんそうだと思います(笑)

聞き手・文 塚本恵理子

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演劇企画集団LondonPANDA主宰 大河原準介 インタビュー 2/4

演劇企画集団London PANDAは2007年に東京で旗揚げし、今年から仙台に拠点を移しました。再出発公演『おふとんのなか』を12月に控えながら、月に1回東京からプロの講師を招いて行うワークショップ『舞台の入口』を10月からスタートさせています。現在どんな思いで活動しているのか/今後どのように展開していくのか、LondonPANDAの舞台の雰囲気や、今作『おふとんのなか』のみどころを、主宰の大河原さんにお話しいただきました。その様子を4回に渡ってお届けします。

【2】ワークショップの開催

もっと社会の全般、企業さんとか町内会だっていいし、そういうところに対して、どれだけ僕らがコネクトしていけるのかっていう。そのためにはなんの道具を磨いておかなきゃいけないのか。そういうことを皆ともっかい考え直したいなって。

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― 仙台での演劇の認知度上げていこうということで、初心者向け俳優養成ワークショップ『舞台の入口』を始めたのですか?

そうですね…ホントに、「何が足りないんだろう?」っていうところから計算をしていったら、とにかく役者の数をもっと増やしたいな、っていうのが出てきたので。

― 10月に1回目を開催してみて、どうでしたか?結構、参加者多かったんですよね。

需要はあるなあっていうのは確信できたというか。でもそういうところに対して意欲的に参加するのが思ったよりも学生さんだなって。まだ仙台の人々って、演劇を始めるということが遠い存在な気がしました。

― 学生ではなく一般の方がっていうのは多分遠いですね。

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でも東京だったらねえ。バイト先で演劇やってる人がいてとか、もともと衣装をやっててとかで興味をもってとか、あとは、芝居を見て自分もやりたいと思って演劇を始める人もいるぐらいだから。そういう一般からの入り口が全くないので、(入り口としてワークショップを)作ったはいいけども…。とりあえず半年間やってみて、じゃあもうちょっとターゲットを絞って、そこに向けて必要なもの、誰を講師に呼ぶかとかを4月からのに活かしていきたいなと思ってますね。
それから、ワークショップは11月から2種類になって、もう一個はコミュニケーションのヒント、『コミュヒント』っていうタイトルでやるんです。

― ええ。

演劇人は、プレゼンテーションとか人に伝えるのがすごく上手なんですよ。でもそれって、世の中にはそれを不得手としてる人もいて。その人達に対して、こういう考え方、声とか身体の使い方で、もうちょっと楽にコミュニケーションできるよ、みたいなものを社会に対してぶつけていく、っていう。

― 演劇人を育てるとかではなくて、演劇的手法を社会に還元するようなワークショップってことですね。

そう…で、プラスそれは演劇人を育てるワークショップにもなっていて、演劇で学んできたこと、やれること、持ってる道具、で社会にどれだけ寄与できるのかっていうのを仙台の演劇人にもっと見せていきたい。
文化庁さんとか、小学校、中学校の公的なお仕事ということだけじゃなくて、もっと社会の全般、企業さんとか町内会だっていいし、そういうところに対して、どれだけ僕らがコネクトしていけるのかっていう。そのためにはなんの道具を磨いておかなきゃいけないのか。そういうことを皆ともう一回考え直したいなって。

― 『舞台の入口』と『コミュヒント』の2軸でワークショップをこれから継続して開催していくと。

そうですね。ワークショップ運営で赤になったら困るけど、大きな黒を生みたいっていうわけではなくて、ゆくゆく自分たちがやっていくのに対して、今は耕しているっていうイメージですね。仙台の演劇自体を。

聞き手・文 塚本恵理子

次回3/4は11月11日公開(予定)
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演劇企画集団LondonPANDA主宰 大河原準介 インタビュー 1/4

演劇企画集団London PANDAは2007年に東京で旗揚げし、今年から仙台に拠点を移しました。再出発公演『おふとんのなか』を12月に控えながら、月に1回東京からプロの講師を招いて行うワークショップ『舞台の入口』を10月からスタートさせています。現在どんな思いで活動しているのか/今後どのように展開していくのか、LondonPANDAの舞台の雰囲気や、今作『おふとんのなか』のみどころを、主宰の大河原さんにお話しいただきました。その様子を4回に渡ってお届けします。

【1】東京で演劇を始め、そして仙台へ

地方でもどこでも、世界に通用する演劇が作れるとは思っているので。宮城だったら作れないっていうのは絶対嘘で。作ればいいだけじゃないの?っていう気持ちひとつで帰ってきた。

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― 大河原さんは仙台出身ですが、東京にはいつから行かれたのですか?

イッセー尾形さんの一人芝居をVHSで観たのが高校3年生の時なんですけど。そこから演劇やりたいと思っていて、早稲田の文学部に行きたくて、でも勉強が嫌いで落ちて。一浪して二浪が決まった時に、仙台で二浪しても同じことになると思って、とにかく東京に出たんです。そしたら、吉本の芸人さんと知り合ってコンビを組んで。

― え?(笑)

ルミネtheよしもとで漫才をするっていう(笑)僕1回だけかと思ってたら、次どんなネタやる?って言われてずるずると(笑) で、12月に解散して。東京に出たはいいけれどもお笑いしかやってないし、早稲田なんか入れるわけないし、どうしようって時にうちの姉が紹介してくれたのが桐朋(桐朋学園芸術短期大学)で。演劇科があって面白そうだよ、学科試験ないよって情報をくれて、ああ学科ないなら受けてみようっていって受験したら合格して。演技経験ゼロのまま俳優養成の大学に行ったんです。

― 桐朋の演劇学科を卒業して、その後はしばらく東京で活動していたんですよね?

そうですね、短大卒業してさらに2年、専攻科というのも合わせて4年間大学に行って。その後G.comという演劇ユニットで演出助手を1年半やっていて、いろんな人や劇団と知り合ったり、小劇場の演劇の作り方みたいなのを一通り学ばせてもらったりしました。
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2007年にロンパン旗揚げしてそこからずっと東京でやってたんですけど。当時の王子小劇場(現 花まる学習会王子小劇場)の芸術監督だった玉山悟さんに「うちでいかがですか」って言われて、2010年に王子でやったのが『おふとんのなか』。それで、佐藤佐吉の最優秀演出賞を頂いて、そのとき29歳で、やっぱり30手前でそれを取れたっていうのが自分の中では「あ、もう少し演劇続けていいのかな」というきっかけになったというか。

そのあと震災があって、そこからちょっと、サラリーマンでもあったので、仕事に集中する期間を挟んだんですけど、約8年間ほど、東京でやってました。

― 会社員をしながらだったんですね。

会社員というか、イベントのプランニングディレクターをやっていて。企画書いたりとか進行ディレクターをやったりとか。
2014年に東京離れることを決めて、今年2016年から仙台です。

― 地元仙台に戻って来ることにしたのはどういうきっかけだったのですか?

んー…まぁ、包み隠さずいつも言ってることなんですけど、結婚がきっかけで。うちのお嫁さんが東京に住みたくないっていう智恵子抄ばりのことを(笑)
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― 東京に住みたくない(笑)

そう…で、どこに住むって言ったときに、まぁ僕が仙台出身で、うちのお嫁さんも宮城出身だったんで、仙台でいいんじゃない?って。
受賞歴はあれど動員数がそこまで伸びてもいなくて、東京っていう、生活することにすら必死にならないといけない環境の中で創作するということに結構疲れ果てていたので。で、ちょっと違ったアプローチでもっかい勝負仕掛けたいな、と思ったときに…まぁ創作する環境が整っている、というか応援してくれる人が多い地元でやろうかなと。地方でもどこでも、世界に通用する演劇が作れるとは思っているので。宮城だったら作れないっていうのは絶対嘘で。作ればいいだけじゃないの?っていう気持ちひとつで帰ってきた、というのはあります。
まぁ…帰ってきて愕然としたこともいくつかあったけど(笑)

― 愕然としたことというのは?

うーん…いわゆる劇都仙台と呼ばれていて、10-BOXを始め、環境は整っているけれども、やっぱり演劇の認知度、仙台に劇団があるっていうことがまず知られていない。

― そうですねぇ。

現時点での演劇っていうものが、社会に対してあんまりアプローチが成功していないというか、小劇場っていう文化がちょっと薄れている、っていうのはびっくりして。仙台には30くらい劇団ありますよって言ったら、そんなに?!って言われて…そっかー今そこか―みたいな。

聞き手・文 塚本恵理子

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