【7/8(金)〜11(月)】「さんぴん」仙台での滞在創作で立ち上げる仙台の物語の舞台裏。

東京を拠点に活動する俳優ユニット「さんぴん」が、7月8日に初の旅公演『NEW HERO』〜仙台、道の上より〜の幕を開ける。メンバーの4人に、結成の経緯や、創作手法、作品にかける思いを語って頂いた。
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左より、福原冠、北尾亘、板橋駿谷、永島敬三

ROAD 1>「さんぴん」結成の経緯〜立志編〜

2015年、「さんぴん」結成のきっかけは、福原冠がある劇場プロデューサーに言われた「何かやったらええやん」という何気ない一言。思い立ったが吉日、劇団の枠を越え、フットワーク軽やかなアツい表現者たちが集結することとなった。
板橋 まず冠ちゃん(福原)が俺に「やんない?」って声かけてくれたんだよね。ちんどん屋スタイルみたいな、お祭りを自分たちで全国に持っていけるユニットがやりたい、集めるメンバーは「バンバン意見も表現も打ち合いができるヤツがいい」って、二人の中ですぐに名前が上がったのが(永島)敬三と(北尾)亘。やるなら今年中、一人でも欠けたらやめようってスケジュールを聞いてみたら、7月に全員の予定が合って。
北尾 「とにかく集おう」みたいな勢いを感じて即「やりたい」と思ったんだよね。
永島 (板橋)駿谷さんから「4人でやるから。マジ最高だから」って電話が掛かって来て(笑)、すぐ直感的に「面白い!」って思った。冠ちゃんともずっと「いつか一緒に何かやりたいね」って話をしてたし。
福原 そうそう、敬三とは前から「二人芝居やろう」って言ってたから一緒にやりたい!ってすぐに思いついた。今回「さんぴん」をやるにあたって、既成戯曲を上演するとか、誰かに作・演出を頼むことも考えたけど、あらためて「俳優って何ができるんだろう」ってことを考えて、「誰かの気持ちや祈りをつなげる表現」だと思ったんだよね。じゃあ、それに特化したことをしてみようって……。
板橋 みんな生きている時点で物語があるんだから、いろんな人にインタビューして、その話を俺たちの手法を使って昇華させられたらいいよねっていう方向に決まって。
北尾 そんな僕たちの提案に三浦君(演出監修)が「君の人生の断片は誰かの人生の本編だ。」っていうキャッチフレーズを考えてくれて、方向性が具体化したんだよね。

ROAD 2>「さんぴん」のコンセプトについて〜奮闘編〜

インタビューで拾った「人生の断片」を、一人芝居、落語、講談、ダンス、ラップなど、あらゆるアプローチで立ち上げる。このユニークな舞台が生まれたプロセスとは?
福原 一回目は「あなたにとって東京は」っていうテーマでインタビューしたんだよね。
永島 僕は祖母とか、妻の母とか、身近な人に聞くことが多かったかな。
北尾 僕はナンパ(笑)。町で見かけたホームレスの方にぶっつけで話を聞いたりして、結果、その人の一代記を聞いたり。
板橋 そうやって集まった膨大なエピソードを、三浦の提案で「明るい」「暗い」とか、ざっくりと縦軸と横軸の表で分けて、それを見ながら「これとこれは繋がる」、「これを落語でやりたい」とか、取り上げるエピソードや担当、手法を決めたんだよね。インタビュアーと演者が違う話もあって、最終的に、その距離感もいいなと思った。話がどんどんフラットになっていく面白さがあって。
北尾 実際に演じ始めてみて、人をリアルに演じるよりも<伝承>に重点が置かれていく感覚が強くなっていった気がする。インタビュアーがメンバーに伝えて、それをお客さんに手渡してってレイヤーが重なっていく感じ。
板橋 あと稽古場で「共通認識にしよう」と言っていたのが、語る気持ちに脚色することはやめようってこと。いくらでも演技でエモーショナルにできるけど、それはウソつくことになるし、話をしてくれた人に失礼になる。確かおばあちゃんの話をやる時にリアルにやろうとして「それだったらおばあちゃんにやってもらったほうがいいよ、おばあちゃん的なしゃべり方とかもいらない」ってちょっとケンカになった(笑)。
福原 その人の再現じゃなくて「感情の伝承がやりたい」ってことに、やりながら気付いたよね。やりたいのは、確かにあったはずの感情を未来にリツイートしたい、みたいな。
永島 未来にリツイート……(笑)。
北尾 出たね(笑)。
板橋 パンチライン来た(笑)。

ROAD 3>合宿生活で生まれた「祈り」〜続・奮闘編〜

こうやって集まった人生のピースを紡ぎ、つなげ、一つの舞台作品としてまとめあげていく。初日前、最後の2週間は、合宿生活でのクリエイションだった。
板橋 いろんな土地でのクリエイションを想定した企画だから、滞在制作がしたかったんだよね。だから東京公演なのに合宿……帰れんのに(笑)。でも作品のことだけを考える時間を持てた経験はデカかった。
北尾 全くプライベートが入り込む余地のない時間が、「誰かの思いや祈りを未来に繋いでいきたい」っていうコンセプトにつながっていった気がしたね。
永島 常に誰かがいて、それぞれが別のことをやっていても、どこかシェアできる状況も良かった! 落語とか講談とか「やりたいけど、やる場がない」表現のフラストレーションをここで解消しちゃっていいじゃん、何をやっても見せ物になるんじゃないかという妙な自信が増したし。
福原 うん。俳優が挑戦している様をそのままお見せしてしまうのもありかなっていう気持ちが、ここで固まった気がする。

ROAD 4>いざ仙台へ〜仙台慕情〜

夏、いよいよ「道」をテーマにした仙台公演のクリエイションスタート。「名前もついていない道は、無名の人と同じじゃないか」との思いを込め、タイトル「NEW HERO」は前回そのまま、「仙台、道の上より」の文字が加わった(サブタイトルが変化していく『男はつらいよ』方式を採用)。
福原 今回のインタビューのお題は「道と聞いて何が思い浮かびますか?」。すでにインタビューを始めてるんだけど、一人は、大学時代につきあってた女の子が住む寮に向かう、原付を走らせてた道を思い出したって話をしてくれて。毎晩会いにいくんだけど、彼女に門限があって、ベランダから手を振るのを見るだけだったって……。
板橋 ヤベェ。
北尾 カワイイ話……リアル『ロミオとジュリエット』だね。
板橋 今回もエピソードを集めていくんだけど、昔はあったけれど、今は無くなっているものや新しくできたもの……そういった記憶や思いを重ねた、俺たちの新しい地図を作りたいっていうのがテーマ。仙台は東日本大震災の影響を受けた場所で、三浦は仙台出身で女川市に住んでいたこともあるし、俺は福島出身だし、今回の公演には自分的にも特別な思いがあるんだよね。
永島 進学、結婚、就職、そういう人生のハイライトだけではない、「あ、こんな瞬間あったんだ」っていう、ささいなことを僕らのほうでハイライトにしていくみたいなことがやりたいって話したよね。
北尾 そうそう。できるだけ、とりとめもないことや、エピソードと呼べるかもわからない時間とか瞬間を立ち上げたい。
福原 本には載らないような人たちの無数の人生が、舞台上で並走していくイメージになるといいなと思ってるんだよなあ。
板橋 今回、初めて仙台のスタッフさんとやれるっていうのも楽しみ。「真夏のカルピス」みたいにスカッとした、信じられないぐらいのエンターテインメントにします!(笑)
永島 誰かのエピソードをお借りしてやらせていただくことに敬意をはらいながらも、僕は、昨年子どもが生まれたし、自分の新しい経験や現在地も重ねられたらなって。でもとにかく、お客さんも参加してるみたいな、全員が同じ風景を見られるような幸せな舞台がつくれるといいな。

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取材・文=川添史子(編集者・ライター)/写真=鈴木省一

さんぴん https://sanpin.theblog.me/

公演情報 https://sencale.com/?p=7979
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記事のURL https://sencale.com/?p=8063