大村もも香さん<若手に聴く>

2002年生、現在21歳の大学四年生
宮城県内で演劇活動を行うU-25の学生・若手に向けたプロデュース公演企画団体「ひのき舞台」のメンバー。
フリーランスの俳優として、ここ一年で6作品、すべて別の団体に、出演や企画をしておられます。
ハイペースかつカラフルな活動の原動力や、今現在の活動と、これからについて、2024年4月に伺いました。
―― 昨年はご出演ラッシュでいらしたのでは。今現在はどんなことをなさっていますか?

今は、動き始めている段階のものが一本あります。それに、KOMOBASEで、幼稚園や小学校低学年向けのアウトリーチ演目を作ろうとしていて、その若手枠として参加しています。
それに、「ひのき舞台」が動き出しているのと、あとは、MCのお仕事で決まっているものはあります。

―― 結構な量ですね。裏方だったら、食べていくことを考え始めるレベル……いやそれには足りないか……

役者は……稼げないので……。就活と並行しながらです。

―― 就職活動をしておられるんですね。

かたちとして……

―― かたちとして?! ……ダミーなのですか?

ダミーというか、心の持ち方として。僕の「真剣」って、のめり込みすぎてしまうので。卒論と就職活動と演劇活動を同時には無理だ、と。なので、一人でやろうとしないで、大学のキャリア支援課の人とかを頼って。
自分の活動の中心に、演劇があって。条件がぴったり合うやつじゃないと就職しないって決めて、無かったらフリーターですね。フリーターでもいい、て思うことで、自分の心の余裕をあける、という。今はずっと仙台で活動しようと思っていますけれど、お金をためて新国立の養成所とかもいいのかなあ、とかいろいろ考えていて。

―― 講師陣も充実していますし、国立という安心感もありますしね。

狭き門ではあると思うんですけど。いろいろ計算していろいろ調べて。東京で住んでいくお金まで貯めようと思うと大変なので、ある程度学費を賄えるくらいとか貯めて、貯まってから考えよう、とか。どうしても、親に頼ってばっかりじゃいられない、というのもあるので。

―― 立派な心掛けですね。

それを貯めるための、就職、みたいな(笑)

―― すごい……。演劇を生活の中心にすると決めて、就職もそれを見据えて、さらにいろいろ考えている、というのは、かなりしっかりしている、かつ、演劇がお好きなんだな、という印象を強く受けました。新国立に行っても、戻ってきて、学んだことを宮城に還元してほしい。とは思いつつ、宮城でなかなか俳優が食っていけない、という面については、私たちにも責任がありますし、なかなか言いづらくもあるのですけれども……。

ちゃんと学べたり食べれる環境が宮城にあるっていうのも大事なことで。あと、宮城といえばこれ、という劇団がまだない、とかも。
僕らが大人になるくらいにそれができないと、大変なことになるな、と。なのでもう、受動的じゃいられないな、という。
先日の10-BOXの利用者説明会でも、知らないことばっかりで僕らも。僕らからしたら、キッチンが使えないとか、「あそうなんだ」、くらいの。僕ら(2002年生)の時はもう、コロナでしたから。衛生意識が。ごはんもみんなバラバラに食べる、みたいな。まかないとかやってたんだー、ていう。ナイトパスとかも、どう使うんだろう、とか言ってる間に廃止、みたいな。

―― それはちょっと、問題ですね。

大学団体とかも、継承されているものが、無い、みたいな。だからもう、廃部の危機、みたいなのもあるので。ひのき舞台では、今、みんなの悩みとかを集めて、仙台の先輩方とか技術を持っている人とかと繋げよう、という意識があります。
今、若手に働きかけている人、というと、2,3人とかしか聴こえてこなくて。なら、他の演劇人とかとも出会ってもらって、いろんな技術や価値観があるんだっていうのを提示するのが大事なのかなと。演劇で食っていっている人もいれば、別で仕事をしながらやっている人もいて、とか。様々な価値観ややり方があることとか、仙台が昔どうだったとか、ちゃんと知る機会がないと、若手が離れていくのも仕方がないかなと。

―― それは、僕(1981年生42歳)らくらいの一回り二回りの上の年代の人々がなんとかするべきことな面もあって、申し訳ない限りです。遅ればせながら、うちは小さなメディアではありますが、やっていこうと思います。よろしくお願いいたします。

ぜひぜひ。
仙台でこれっていう団体を聞かなくて。いろいろあるのはいいことだと思うんですけれど。
僕も、高校卒業したらSENDAI座☆プロジェクト(2007年発足、2020年解散)に入る、とか思っていたんですけれど、卒業のタイミングでなくなってしまって。他所へ行くよりは、もうフリーでやっていこうと。大学四年間は、フリーでやっていこうと決めまして。フリーはいろんな劇団に客演でいけるのが強みだと思っていて。あと、いろんな団体の人と、団体としてではなく個人として会話ができる、というのも、やってみたらすごく強みだなと。

―― その年齢でそれに気づいて自覚的にやっているというのはとてもすごいですね。

いろんな団体さんと、分け隔てなく接して、いろんなお話を伺えるという。

―― 僕も、フリーの裏方をやっていなかったら、仙台演劇カレンダーをやれるとは、思わなかったかもしれません。

そんな強みもありますし、いろんな劇団さんに出てみよう、オーディションはなんでも受けよう、みたいな。

―― その決意が、このとてもカラフルな出演歴のもとになっているのですね。

そうですそうです。フリーになるなら、と。あと、あんまり団体の中で競い合う、というのが好きでなくて。あわあわしてしまって。団体内でキャストが選ばれる、みたいなのが苦手で。いろんなところに気を使ってしまって。高校で選抜メンバーとかでやるとき、生徒会長をやったりしていたりもしたので、選ばれなかった側の話を聞く機会とかもたくさんあって。あんまり人が多いのは大変だなと。

広報活動のためにも、と、こまめに自撮りをなさるのだそうです
―― 演劇をなさるようになったきっかけは何でしたか?

そもそもは声優志望だったので、高校は声優も目指せて大学進学もできそうなところを選びました。高校のコースが、声優系か、舞台俳優系かで分かれていたのですが、非常に悩みました。容姿に自信もなくて。高校一年のコースを決める頃に、戸石みつる先生の勧めで、エル・パーク仙台にSENDAI座☆プロジェクト「十二人の怒れる男』(2018年)を観に行きまして、「これはやばい! あれやりたい!」となりまして。それが、舞台俳優志望に変わったきっかけでした。もともとミステリとか、『相棒』とか好きなタイプで。「あの熱量を、お芝居でやりたい」、と。

―― それで高校では舞台の方のコースに。

そうでした。
その後、『ナイゲン』(劇都・仙台演劇祭(仮)プレイベント メインステージ「ナイゲン」)に、高校一年生の最後の頃に、仲間でみんなで参加してみよう、と。高校の僕の代が、すごいやる気のある人が多くて。みんなで「やろう!」と決めて。学内の発表とかも直前にもあったのですけれど。
出演者の半分くらいは知らない方々だったのですけれど、その時共演した方々は、今も何人も演劇を続けています。米山陸(劇団ざくろう、劇団 東北えびす)さん、田川遥(劇団ざくろう、演劇ユニット石川組)さん、山田優輝(劇団ざくろう、丸福ボンバーズ)さんとか。

―― 高校生の時には、他には学外への出演は?

高校では、割と中でやっていたような感じが自分にはあります。他には『Play Kenji』のリモート版(2020年 高校生と創る演劇 リモート版創作・作品配信 PLAY KENJI『人や銀河や修羅や海胆は』)に出ました。コロナ禍で一度中止になった企画が、またやるというので参加したかったのですが、ちょうど受験とかぶってしまって。でもリモートでは出演できました。その、二つくらいです。

―― では、高校ではそんなには、ぐいぐい外に出る感じでもなく?

そうですね、高校が、歌やダンスやMCの発表会やステージの機会が多い学校で、2,3か月に一本くらいはステージに出ていました。

―― 今の活動のペースは、その時に培われたのかもしれませんね。

舞台が一本終わる前に、次の稽古が始まる、とかは、高校の時からそうでした。当たり前すぎて、がつがつやっているというイメージが自分にはなかったです。周りの方には、頑張ってるねとか、たくさん出てるねとかおっしゃっていただくのですが、自分としてはそんな意識は無くて。これくらいがあたりまえでした。むしろ、もっと何かないかな、くらいの。『ひのき舞台』も、それでやるようになった、という。

―― ものすごいですね。

「ひのき舞台」ではもともと出演希望でした。同年代の方々をあまり知らなくて、一緒にできるなら全然やりたい、くらいの気持ちでいたら、制作で! て(笑)

U-25向けプロデュース公演企画 ひのき舞台 Version:1『桜の園』仕込み中。
―― 高校から大学になると、より好きにできることが増える、と思うのですが、コロナ禍にぶつかっていますよね。今の若手の方々は共通して、「活動初期にお互いに知り合えない」、という難しさを抱えておられるんじゃないかなと。

僕らもそれをネックに感じていて。同年代は、いるけど、分からない、みたいな。ひのき舞台で大学演劇部にヒアリングしていくと、「他の演劇部との関わりが、とうほく学生演劇祭くらいしかない」「客演し合うとかの文化も途絶えている」とかの声が聴こえてきます。もともとひのき舞台では、僕とか戸田悠景とかが自分たちの人脈を生かして若手を支援していくのが良いのかと思っていたのですけれど、むしろ、大学団体同士の交流に力を入れていくといいのかと。本田椋(劇団 短距離男道ミサイル)さんから、昔やっていた東北電力の企画のこととかも聞きまして。

―― 仙台演劇カレンダーでも、大学団体同士とか、若手と若手団体とか、交流の企画は温めていました。ぜひご相談させてください。

ぜひぜひ。

―― 今後は、どんな活動を? ひとまずは仙台で就職して、活動を続けて、という感じでしょうか。


まだあんまり関わったことのない方々とかも結構いらっしゃるので、そういう方々とも一緒にやりたいというのがあります。僕のわがままなんですけど、まだ全然活動してない、と思っていて。まだまだやりたい、まだまだやれる、と。あの、高校の時からの目標で、信頼される役者になりたい、というのがありまして。「大村ちゃんが出ているなら面白いだろうから観にいこう」とか、「ここの役者が足りないの、大村ちゃんなら安心して任せられるな」とか。そうなるための勉強がしたいですし、場数も踏みたいですし、人脈も作っていきたいなと。
あと、同年代と一緒に活動していくことも大事だな、というのもわかってきたので、戸田っちだけじゃなくいろんな、同い年の人と、作品を作る、というのももっとやっていきたいです。
いま、一年生とか二年生とかの子たちもひのき舞台に入ってきてくれているので、そういう子たちとも、一緒にやっていく中で、継承もしていきたいなと。

―― 僕絶対20代前半の時にそんなに考えていませんでした。
U-25向けプロデュース公演企画 ひのき舞台 Version:1『桜の園』仕込み中。左は同じくひのき舞台の戸田悠景さん

とにかく自分は周りに恵まれているというのがまずいちばんにあります。同年代でも戸田ちゃんとか小西奏太(宮城大学演劇集団Arco iris)君とか、みんなすっごいアタマいいし、いろんなことをとちゃんと考えてて。タイプも違っていいところもたくさんあって。
人のいいところを探せるというのが自分の強みだと思っています。それを、他の人にどう伝えていくのが良いかなと考えています。

―― この企画のインタビュアーをやりませんか(笑)

いつか機会があればぜひぜひ。

―― ぜひぜひ。

ひのき舞台での各団体とのヒアリングとかも僕がしていて、人の話を聞くの好きなので。あの、高校時代、人をズルいと思うことが多くて。それがすごい、イヤだったんですけれど。言い方を変えれば、人のいい部分が見えるってことで。それを、活かした方向にしようって思って。ズルいじゃなくて、良いなあ、って。

―― 人間ができている……。

いやいや(笑)

前列左から二人目が大村さん。U-25向けプロデュース公演企画 ひのき舞台 Version:1『桜の園』集合写真
―― いろんなお名前が挙がりましたけど、気になる同年代の人とかっておられますか? 関わりがあまりないけれどお話を聞いてみたいとか、ご存じの方の中で、この人はどうかなとか。

鈴木萌加(山形大学演劇集団舞台工房、 ひのき舞台Version1:『桜の園』出演)ちゃんとか、山形と仙台を行き来しながら、自分の団体もやりつつ、とか、すごいなと。
あと、山口幸晟くん、短距離男道ミサイルの新劇団員の。演劇マジでやったことなくて、ミサイル一本も観てなくて、入ったらしいんですよ。

―― クレイジーだ。

でもすごいセンスが良くて、人をひきこんでいける人だなと思いますよ。

―― あと他にもっと言っておけばよかったかなということとかおありですか?

もっとお仕事が欲しいです。

―― それはやる気のある若手はみんなそうかもです(笑) 皆さん、それぞれのレベルで、お仕事が欲しい。

大村は好奇心で動いてるんですよ。好奇心で本を読んだりいろんな活動をしたり。でも全部演劇につながると思っているので。役者以外の舞台のことも、みんな知りたい、と思いながら、制作もしていたり。だから、いろいろやっていきたいです。

―― ちなみに仙台演劇カレンダーに望むこととかってありますか?

うーん。

―― まあ、影の薄い状態を数年続けてきていたので、「べつに…」ということもありそうですけれども

企画をやるとかも今回初めて知りました。
あでも、昔の劇団に入っていた方からしか、仙台の演劇の今までを知れなかったんですね。先日の10-BOXの利用者説明会の帰りに戸田っちとしゃべっててたんですけど。昔の劇都仙台と今を、大人たちは比べているけれど、僕たちはその劇都仙台のことは知らないよね、と。全盛期がどうだったのかわからない。そういうのを若手がもっと知れたらいいな、ていうのがあって。それは、ひのき舞台でやろうとすると難しいんですよ。知れたらいいな、というのがちょっとあります。

―― 例えば、ひのき舞台の人々をインタビュアーにして、老舗の演劇人に突撃インタビューをしまくる、というのは面白いかもしれません。

たしかに、楽しそうかもしれません。

U-25向けプロデュース公演企画 ひのき舞台 Version:1『桜の園』活動中
―― 僕ももう、全盛期というのは知らない世代で、全盛期のことは、上の世代の方々から伝え聞く、というやり方でおぼろげにしか知りません。あと、時代感的なことはかなりの部分が肌感覚というか、細かなエピソードの積み重ねでしか知れないことも多くて、年表と数値とかでは難しそうですね。

結局仙台にどういうカラー・歴史の劇団があるのか、というのは、聞かないし調べても出てこない。団体に所属するのの怖さがそれで若手にある気がして。

―― 各団体はWebサイトを持っているでしょうけれど、そういうことではなく?

一覧、みたいな。

―― うちの役目かもしれませんね。

各団体がどういうコンセプトでやっているかとか、経緯とかも全然わかんなくって。周りの人に、劇団入りたいんだけどどこが良い? とか聞かれても全然わかんなくって。ここ新人募集してる? とか。わかんないのが、これから始めるって子が悩んでるイメージが結構あって。
フリーでやればいいよ、とは大村的には気軽には言えなくて。でも「君にはここが良いよ」とかも団体を知らないから言えないですし。

―― 僕や皆さんより少し上の代の演劇人がお力になれるかもしれません。それはそれとして、仙台劇団名鑑的なものはあってもいいかもですね。若手劇団に聴くシリーズをとっかかりに作ろうかな……。

あ、公開収録のラジオ、とか。音声ありがたいですよ。通勤中とか運転中とか聴けて。乗り物酔い酷いと文章見れませんけれど、音声は大丈夫。

―― 考えてみたいと思います。

ぜひぜひ。

―― では、本日はありがとうございました。

ありがとうございました。

プロフィール

2002年生まれ。宮城県塩竈市で生まれ育ち、現在は大学生として心理学を学びながら、仙台を中心にフリーの俳優として活動中。高校から舞台演劇、アフレコ、ダンス、歌唱などを学んだ経験を活かし、俳優のみならずMCやナレーション、ダンス、ゴスペルなど幅広く活動を行っている。好きなものは、ミルクティーと大きい犬。

主な出演作品

・2019年 劇都・仙台演劇祭(仮)プレイベント『ナイゲン』
・2022年 A Ladybird Theater Company プロデュース公演『Snowdrop』
・2023年 劇場R『キル』
・2023年 大人のための演劇クラブ2023=番外編=『ギラギラの月』
・2024年 塩竈夢ミュージカル『愛しい人へ』

個人リンク

X(Twitter) @omelette_momo

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ひのき舞台

聞き手 本儀拓(仙台演劇カレンダー)

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本儀拓 について

宮城県仙台市で舞台音響、音響効果をやっています。 キーウィ サウンドワークス( https://kiwisoundworks.com )代表。 本を読んだりお茶を飲んだりお酒を飲んだりするのが好きです。